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沖縄法政研究所では、2013(平成25)年2月26日(火)に、本学名誉教授の来間泰男氏を報告者に迎え、第44回研究会「琉球政府の性格−主として財政の視点から−」を開催しました。
報告の中で来間氏は、琉球政府の実態を、担っていた責務の大きさと、財政的基盤の小ささ・弱さを比較し、そこから、他県であれば国の事務、あるいは国の機関委任事務として、国の財源措置により県が行なうべき事業を、琉球政府は、日本政府からの財政支援無しに行わざるをえなかった状況を示して、それが、米国施政下の民政部門社会資本整備の極端な遅れや、福祉・教育分野の弱さの根本的な原因であったことを検証されました。
また、町村の行政組織の小ささ(米国型自治体のあり方に起因するものと考えられる)を統計資料を以て示されましたが、これは、今に続く沖縄県の市町村自治の「弱さ」の原因の大きな部分なのでしょう。
さらに、財政力から見た琉球政府は、住民の生活を守ることは到底出来ない「政府」であり、それが、住民の不満を高めて米軍基地の安定的運用の妨げになるとの認識から、日米両政府に日本復帰を促す背景ともなったと指摘されました。
質疑応答では、来間氏が沖縄県の経済的「自立」の可能性が低いと指摘した点に対して、会場からの意見、質問が集中しました。
来間氏の論旨は、沖縄経済の客観的な困難な条件を、「政治」が解決することは無理であり、沖縄経済が、何か一つの鍵により、飛躍的に発展するという期待は持つべきでなく、地道な、目の前の課題を解決していく努力こそが重要であるとの、現実に根ざした展望です。
「夢」を語ることは重要であるが、その「夢」は、明日から食べていくことに直接かかわる以上、現実の条件を踏まえたものであるべき、ということが、来間氏の伝えられた教訓だと考えられます。
また、来間氏が長年主張されてきた、「普天間基地は、返還されれば経済効果が大きいから返還させるのではない。普天間基地の存在が、人権と平和の阻害要因であるから、返還させるのである。復帰後の経済効果にあまりにも重きを置く議論は、ならば、儲からねば返還して欲しくない、という論理になってしまう」との論点を、今、改めて確認出来た意義は大きいと考えます。
文責:佐藤学(沖縄法政研究所所員・法学部教授)
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